ここ数年、「商標」という言葉がニュースをにぎわせることが何回かありました。

商標というと小難しい話のように思えるかもしれませんが、ペーパードライバースクールを運営している人にも深く関係のある内容です。

今回はペーパードライバースクールと商標の関係について、解説していきます。

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商標権とは

簡単に言うと、商標とは商品やサービスに付ける名前・マークのこと。そして、こういったネーミングやマークを独占的に使用する権利が商標権です。

商標権は、権利で守りたいネーミングやマーク(商標)と商標を使う商品・サービスの分野(区分)をセットにして特許庁に申請し、審査に合格することで権利化できます。

商標権を取るメリット

商標権を取るメリットは大きく3つ。

ひとつは権利化したネーミングやロゴを独占的に使えること。

日本の商標制度は先願主義という、早い者勝ち制を採用しているので、万が一ほかの人が同じネーミングを権利化すると、その商標を使えなくなるリスクがあります。

ふたつめのメリットは、商標の模倣・使用を防げること。

海賊版やパクリの防止ですね。もしスクール名やロゴをパクられても、商標権を取得していれば差止請求をして商標の使用をやめさせるといった対策が可能です。

最後はブランド保護効果です。

商標を権利化して独占しておけば、便乗商法や海賊版によるイメージ毀損などを防げ、結果的に自分たちのブランド価値も守ることができます。

商標を取らないとどうなる?

もしスクール名やスクールロゴを権利化しないと、他人に商標権を横取りされたり、似た名前・ロゴのスクールが商標権を取ったりするかもしれません。

そうすると商標権を持っている人が「あなたのスクール名やロゴは私の商標権を侵害しています。スクール名やロゴを変えてください」とか「損害賠償を支払ってください」などと言ってくる危険性があるんです!

スクール名やロゴを変えると、せっかく積み上げてきた「〇〇スクールは教え上手で安心」といった評判もイチからに…。

大切なスクール名・スクールロゴを守るためにも、ぜひ商標権の取得について、真剣に検討してみてくださいね。

実際、商標を取得しているスクールの例

では、世のペーパードライバースクールはどんな商標を取得しているのか?実例を見てみましょう!

ちなみに商標権を取るときは出願の際、区分と指定商品・指定役務というものを指定します。簡単に言えば、商標を独占して使いたい商品カテゴリー(区分)と具体的な商品内容・サービス内容(指定商品・指定役務)を申請するんですよ。

さくらドライビングスクール

商標登録第6456683号

さくらドライビングスクールは、第41類という区分で商標権を取得しています。

この第41類は教育、訓練の提供、娯楽、スポーツ及び文化活動についての区分なので、ペーパードライバー”講習”をするなら確実に押さえておきたい内容です。

ファーストドライビングスクール

左:商標登録第6625634号 右:商標登録第6625633号

ファーストドライビングスクールは、ロゴマークと”ファーストドライビング”という名称の2つを権利化しています。ロゴだけ、名称だけで権利化するより厳重に商標が守られていますね。ちなみに取得区分はどちらも第41類です。

ちなみにファーストドライビングスクールは商標公報に代理人(弁理士)の名前が記載されていないので、どうやら自分たちで商標出願をしている様子。

のちほど解説しますが、知財の専門家である弁理士に頼んで商標出願すると結構いい費用がかかります。

きちんと役に立つ権利を取るには専門知識が必要なので、弁理士(特許事務所)を頼るのがベストなのですが、どうしても費用面がネックになるなら自力で書類作成するという選択肢も検討してみてください。

ペーパードライバーサポート香川

商標登録第5588831号

こちらも、しっかり第41類で権利を取得しているスクールの例です。

ひとつ特徴的なのが、早期審査という制度を利用している点。

商標の早期審査とは、簡単に言うと、一定条件を満たす出願を通常よりも早く審査をする制度です。勝手に早期審査が適用されるのではなく、出願人が申請すると適用されます。

商標権を得るには出願後、特許庁の審査に合格する必要があるのですが、一般的に出願から審査着手まで5ヶ月強かかります。しかし早期審査制度を使えば、審査待ちの期間を約2ヶ月に短縮できます。

いくつかの条件をクリアする必要はありますが、早期審査に追加料金はかかりません。

商標を取るための費用っていくらかかる?

商標出願に必要な金額は、自分で出願をするなら3万円~、プロに代行してもらうなら14万円~が相場となります。

自力で出願するのはとても安価ですが、安さだけで自力出願を即決するのはちょっぴり危険です。

いざという時にしっかり役立つ権利を取るには、どうしても知財の専門知識が必要。このあとの解説を読んでみて「無理そうかも…」と思ったら知財のプロである弁理士に頼りましょう。

商標権を取るまでの流れと、かかる期間

商標権を取るまでのステップは、大きく4つに分けられます。

  1. 他人の商標とかぶってないか調査する
  2. 出願書類を特許庁に提出する
  3. 審査結果に対応する
  4. 権利維持費用を納付する

出願してから権利化までにかかる期間は、特許庁の調査によると平均7.3ヶ月。さきほどのペーパードライバーサポート香川のように早期審査の申出をすれば、待ち時間を3~4ヶ月短縮できます。

参考:特許行政年次報告書2024年版

商標を自分で権利化する方法

ステップ1:区分を決める

まずは商標の権利範囲=区分を決めます。区分数が増えると、権利範囲が広くなる代わりに費用も増えるので、慎重に見極めましょう。

ペーパードライバースクールの場合、一般的には教育、訓練の提供、娯楽、スポーツ及び文化活動についての区分である第41類を取得します。

なお参考までに自動車教習所の商標について調べてみたところ、ほとんどは第41類の1区分だけで権利化していました。

ステップ2:似た商標が既に出願されていないかチェック

次に、同じor似た商標が出願されていないか調べます。

日本の商標制度は早い者勝ちなうえ、似た商標の権利化を許さないので、出願し損をしないためにもリサーチは必須。

最低限、J-PlatPatでの簡易検索は利用しましょう。

ステップ3:出願書類を作る

同じor似た商標がなく、出願しても問題なさそうなら書類を作成していきます。

出願書類は、独立行政法人工業所有権情報研修館のポータルサイトからダウンロード可能。書類の書き方も、同じポータルサイトの別ページで詳しく解説してくれています。

書き方ひとつ、言葉遣いひとつで権利化できるか、より短期間で権利化できるか、追加の修正が必要か、などが変わるので記入は慎重に!

ステップ4:特許庁に書類を提出する

書類が完成したら特許庁に提出をします。

いまはインターネット出願ができるので、こちらを使うのがおすすめ。というか、インターネット出願をしないと電子化手数料が余計にかかるので、特別な理由がないならインターネット出願を利用しましょう。

ステップ5:審査結果に対応する

審査の結果、拒絶理由通知という書類を受け取ることがあるかもしれません。

この書類はいわば出願書類への赤入れで、権利化を認められない原因を教えてくれるものです。

もし拒絶理由通知を受け取っても、意見書や補正書を送って適切に対応すれば登録査定がもらえるので大丈夫。

特許庁も分かりやすいヘルプページを用意しています。

ステップ6:登録査定が出たら、権利の維持費用を支払う

無事、商標登録査定が出た!

そうしたら忘れずに商標権を維持するための費用を支払いましょう。

いかがでしょう?自分で商標出願をする方法を簡単にご紹介しました。もし自力での商標出願に不安を感じたら、無理せず弁理士に頼ってくださいね。

まとめ

スクール名・スクールロゴを守るために必要な「商標」について解説していきましたが、いかがでしたか?

知的財産はとっつきにくい部分も多いですが、上手に活用すれば自社サービスをより盛り上げてくれる、心強い味方となります。特に商標は、どんな業界やどんなサービス提供者も関係がある重要なツールです。

そんな、難しくも面白い知財の世界について興味が湧いたという方は、ぜひ知財HRもご覧ください!